ホンダCR-Vで行く
「四国カルストへの旅」
異常に多い台風や地震といった災害に見舞われた2004年。そんな年も終わりを告げようとしている12月、これまでの愛車だった
オデッセイを同じホンダのCR-Vへとチェンジした。年末の慌ただしい最中、まだ雪の降らない四国カルストへと連れ出してみた。
都会派SUVと言われるCR-Vを、都会じゃない四国山脈の山道で検証してみることにしよう。

姫鶴平にて
姫鶴平のちょっと下で。下界の悪天候とは裏腹に山頂付近はいい天気。
毎年のことではあるが年末は何やらいろいろ忙しい、私だけでなくみんな忙しい。そもそもそんな忙しい時期にクルマを買い換えるなんていうのが間違いではあるが、一応言い訳させてもらうなら本来の予定は11月末だった。書類が揃うのが遅くなったことや工場からの出荷が遅れて結局12月中旬に。長かったなー待っているのは(^_^;)でも待つのも楽しみの一つと割り切って・・・。

このCR-V、型式はRD7と言って二代目CR-Vの後期型になる。このモデルになってもう3年を経過する事からおそらくこれが最後のモデルとなるであろう。この秋に大掛かりなマイナーチェンジした割りにはハリアーほど売れていない。メジャーなSUVは一台でクルマ雑誌1ページを飾れるが、地味なCR-Vに割り付けられる範囲は半ページ足らず。

ただ、そういったイメージはあくまでも日本国内での事で、SUV天国と言われるあの国ではたしかパイロットという名前だったと思うが、コンパクトSUVとして人気が高いらしい。また、初代は世界各国で100万台以上を販売したヒット車だったことを最近知った。道理ですれ違うクルマがほとんど初期型なのか納得出来た。

今回、なんでオデッセイからCR-Vへの乗り換えになったかという経過はあとあと書くとして、何はともあれさっそく山へ行こう!どんなクルマも走らないとその価値は分からない、というのが私の持論。オドメーターがまだ200キロほどしか回ってない新しい相棒を鉛色の雲が垂れ込める空の下、四国カルストへと上がって行った。

風が強く日差しはない生憎の天気、雪こそ降ってないものの当然寒い。ヒーターの効いた車内からは出たくないという気になってしまう。宇和島からはいつものように檮原へ。そこから四国カルストへと上がっていく。このルートはハリアーを借りた時にも走っているので比較がしやすい。早合点は禁物だが、結論から言うとハリアーに負けず劣らず優れたSUVだと感じた。と同時に、このクルマを選んだのが間違いじゃなかった事に一安心。
後ろに見えるのは風車 壮大な大野ヶ原を背中に
天狗高原方面は雲で真っ白、風車は勢いがいい 雄大な大野ヶ原方面をバックに
何が良いかというとその軽快感。オデッセイの重厚な乗り味も捨てがたいが、こういう勾配のキツイ山道を登るのにはある程度のパワーと大きすぎない車体が大事になってくる。CR-Vは今回のマイナーチェンジで2.0リッターから2.4リッターへ変更されていて、その点では動力性能にまったく問題はない。

エンジン型式はK24Aといって、現行オデッセイやエリシオンに搭載されているものと同型。ビックリするほどのパワーはない代わりに、i-VTECらしく素直によく回るエンジンだ。難を言えばその排気量から予想されるようなトルク感は感じられない。ただ、今まで乗っていたオデッセイが3リッターだったことから、余計にそう感じてしまうせいもあるだろう。また、エンジンが変更された事に伴って5ATになった。シフトスケジュールが見直されたのか、うまく変速しているようでシフトショックはほとんど感じない。

ハリアーにオプションで装備されていたサイドモニターこそないものの、ボディの見切りは良好で横溝いっぱいに寄せることも可能。ただし、フェンダー左に付いている補助ミラー?はあてにしないほうがいい。鏡面が調整出来ないし、絶対的な大きさも足りない。日本でもつい最近発売されたニッサンのムラーノなどはこの補助ミラーは付いていない(その代わりサイドミラーにモニターあり)ので、もうこの法規制はやめてもいいのではと思う。

マイナーチェンジのもう一つの大きな目玉が駆動方式の改良。デュアルポンプ方式に変わりはないものの、従来のものでは後輪に駆動が伝わるタイムラグが大きいため姿勢が乱れやすく大きな不満になっていた。そのためワンウェイカムとパイロットクラッチというモノを追加。これにより通常FF状態だがいったんスリップを検知すると瞬時に後輪への駆動を伝えるという。ただし、そんな道路状況(わかりやすいのは雪道か)にまだ遭遇してないので、ちゃんと働いている(?)かどうかは不明。今度、安全な雪道で試してみよう。
ボルボXC70 ボルボXC70
絶大なブランドイメージを放つVOLVO、画像はXC70
4WDではご存じのようにフルタイムとパートタイム(スタンバイ4WDとも呼ばれる)がある。フルタイムとは文字通り常に4輪に駆動が伝わる方式で、前後輪の駆動配分は各メーカーの考え方やその車種によって違いがある。
CR-Vは通常FF状態だからスタンバイ4WD。先述のように前輪のスリップを検知すると後輪へ駆動が伝わる方式だが、これによく似た考え方がVOLVO車に採用されているハルデックス社のシステム。ただ厳密に言うと、こちらは常に5%の駆動を伝えているので純粋なスタンバイ4WDではなく、呼び名もスバル同様AWD(オールホイールドライブ)という。

タイヤは215/60R17のミシェランM/S、このクルマに17インチはオーバースペックか?と思うが、ロープロ化は時代の流れ。16インチとの比較をしてないので正確には分からないが、雑誌とかのインプレッションではコーナーの踏ん張りがとかに貢献しているそうな。そう聞くとそんな気がしてくるかも(←かなり適当)。
ネックはそのサイズのためスタッドレスタイヤが高い!ショップの話しではスタッドレスの時だけ16インチに落とした方がかなり安くなるとの事。たしかに価格表で見ると16と17を境にお値段がかなり違っている。もしスタッドレスをこれから履こうと考えている方はご検討を。ついでに言うなら純正のアルミホイールは掃除しにくい・・・。

このマイナーチェンジからモデルのグレードが整理されて、基本的には2種類に。バンパー上部まで黒樹脂でカバーされたワイルドな「iL」と、この「iL-D」。
「iL」は質実剛健、FFの設定はなく4WDのみ。ホイールすらスチールで、購入後自分好みにカスタマイズする楽しみがある。クルマの基本的な性能に違いはないが、VSA(注)はオプションでも付かない。
「iL-D」にはFF仕様もあるが、先述の新型デュアルポンプを試したければ当然4WDをチョイスしないといけない。ただ、めったに雪道や悪路を走ることがないのならFFで十分だと思う。約70キロも車重が軽くなることからハンドリングやブレーキングに有効に作用し、自然に燃費も向上する。私はただ物珍しさだけで4WDを選んだ。これで雪が積もらなければバチが当たる?

注:ビークルスタビリティアシストの略、ABS+TCS+横滑り制御の総合システム
はい、ポーズ 下が芝生ならもっといいかな
後ろは愛媛県の瀬戸内海方面 夏用チェアーなのでメッシュ、さぶ〜
道幅は狭いものの対向車もなく、まだ慣らしも終わってないCR-V君は快調に上っていく。標高が上がるにつれて雲の隙間からは青空が見えるようになり、1,000メーターほどになると見事な快晴に。う〜ん日頃の行いが・・・(*^_^*)。

しかし、頂上付近の姫鶴平荘前まで上がると、そこは恐ろしいぐらい風が吹き抜けていて、上の風車の写真を撮る際に車外に出たわずか30〜40秒で体はガチガチに。とてもお湯を沸かす状況ではなく、やむなく風が当たらない場所を探索する。まあ太平洋側を見ても瀬戸内海側を見ても、何も遮るものがないのだから風が強いのも当たり前と言えば当たり前か。

200メーターほど柳谷方面に降りた道路の脇に狭いスペースを発見。本来なら行き交う観光客の目にさらされる場所だが、この時期に通るのは地元の酪農業者か私のようなごく一部の物好きな者しかいないのでここに決定した。ちなみに撤収するまでに横を通ったクルマは全部で4台ほどしかいなかった。

この空き地の先は崖になっていて、これが地形的に風を避けてくれるのかさっきの場所ほど強い風は当たらないようだ。時折「ゴォー、ヒュー」と山が鳴いているのが間近に聞こえて、ちょっとビビる。

慣らしの話しが出たのでついでに書かせてもらうと、クルマの「慣らし」って必要なんだろうか?今どきのクルマに慣らしなんてナンセンスという意見や、いややっぱり1,000キロまでは○千回転までに押さえてという声も・・・。私の考えでは「慣らし」という行為は特に必要ないと思っている。敢えて慣らしが必要とするならば、それは運転する人間の方であると考えているからだ。だからまだ溶剤のニオイが取れないクルマを山に登らす事もするわけで(-_-;)。

場所が決まったら荷物を出して、さっそくお湯を沸かそう。画像では分かりにくいが、この大きなテーブルは標準で装備されている物で、普段はラゲッジルームのスペアタイヤ上にカバーを兼ねて収納されている。よくあるオマケ的な物かと思いきや、なかなかどうしてしっかりした作りになっている。これならファミリーキャンプの際にも重宝するだろう。
カセットコンロはイワタニ製。こんな低温時には普段の熱量が出ないので、本来はボンベをアウトドアー用に変えるべきだが、どこを探しても見当たらないので普通の物を使用した。
チェアーはサマーシーズン用で、背中の部分がメッシュになっていてとても涼しい(?)。案の定、すぐ我慢できなくなりケースに入れていた小さなアルミマットを敷いたが、日が当たっているので座っているより立っていた方が暖かい。

コンロに火を着けてもう10分近く経つのに一向にお湯が沸く気配がない。湯気は立っているが沸騰しないのだ。なぜ?と思ったが、ここは標高1,500メートルぐらいあって気圧が低いため、平地のようには沸騰しない事に気が付いた。まあいいか、どうせカップヌードルだから。でも念には念をと、お湯を入れて5分近くも待っていたにもかかわらず、四角いジャガイモは固いままだった、残念!これは今後の課題としよう。
大きな目が愛嬌 美しい牧草地が広がる大野ヶ原
大きな目玉が愛嬌 四国じゃないような風景の大野ヶ原
説明書を読むのがイヤでまだ機能の半分も使ってないが、うまく使いこなせばとっても便利なはずのNAVI、当然オプション品。当初、純正品をと考えていたが高額なためホンダアクセスから出ている製品に変更した。機能的にはほとんど変わりはないし、純正の位置にピッタリ入るので後付け感がないのがいい。DVDとHDDの価格差がほとんどないのでHDDを選択したが、結果的にこれは正解だった。HDDには最大約1,500曲も録音出来るし、ルート検索とかも素早い。
そして何よりリヤーカメラ装備なのがいい、予想以上に夜間も明るくて見やすい。欲を言えばシフトレバーをリバースに入れた時の画面の切り替えをもう少し早くして欲しいが。

NAVIをケチるぐらいだからだいたい予想は出来るが、是非付けたかったサンルーフは約10万近くもするため泣く泣く断念。フルオープンにする機会はめったにないものの、チルトアップを活用すれば優れた換気装置になることは案外知られていない。この季節、ヒーターを効かした車内はどうしても上半分に暖かい空気が溜まるが、窓を開けると後席にも冷たい空気が入ってしまう。
そこでチルトアップすれば冷気を入れず頭上の暖かすぎる空気だけ排気出来て、理想的な頭寒足熱を保てるのだ。走ってさえいれば少々の雨も入ってこない。他のオプションを削ってもサンルーフだけは付けておくべきだったと少し後悔している。

3分という短い時間すら我慢出来ず、まるでお湯を注いですぐに上蓋を取ってしまったようなカップヌードルを食べ終えると、後はする事もないのでしばし日向ぼっこをすることにしよう。
イスに座ってCR-Vの後ろ姿を眺めていると、縦長のリヤーコンビネーションランプがどこかのクルマに似ている事に気が付いた。日産のエクストレイル?そう言われればよく似ている。このCR-Vはスペアタイヤを背負ってないので余計に似ているのかもしれない。
スペアタイヤをバックドアーに背負うと雰囲気はいっそうSUVらしくなるが、全長が長くなるしリアーカメラが映し出す範囲も若干だが狭くなってしまう。また、バックドアーの開閉も重くなるだろうと考えてCR-Vでは少数派のつり下げ式にしたが、これによって今までに不都合は起きていない。

日向ぼっこもそれほど長く持たない。体が冷え切ってきたのが分かるようになったので名残惜しいが帰路に着くことにしよう。ここから山を下るには4方向への道がある。まず来た道の檮原ルート、天狗荘前を通る須崎方面ルート、愛媛県の柳谷へ降りるルート、同じく愛媛県の野村方面のルートである。
どれにしようかと悩むほどもなく、最後の野村方面ルートにクルマを進める。綺麗な放牧地を抜け、広域林道とかいう驚くほど整備された道を走り無事に下山した。終始、風は強かったものの晴天に恵まれて良いツーリングになった。いいクルマにいい道、そしてお気に入りのBGMさえあればあとは必要ない?
さて、来月はどこ行こう・・・(^_^)v。

付録

大晦日から元旦にかけて降った雪を堪能するつもりはなかったが、正月3日に広見町(正確には1日に隣の日吉村との合併で鬼北町となった)にある安森洞へと湧き水汲みに出掛けた。平地では雪はすっかり解けてしまっていたが、山間部ということと日陰になる地形からご覧のようにまだ積雪が残っていた事にビックリ。
この写真を撮るために車外に出たときに路面が凍結していることに気が付いたが、スリップらしい挙動を微塵も見せず、何事もなかったように登るCR-Vの頼もしさ。まあ、逆にこの程度の積雪で立ち往生していたら情けないが・・・。
安森洞登り口にて 安森洞登り口にて

この文章は2004年末から2005年1月にかけて書いたものです。

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