このページは2020年夏にチャレンジした資格取得のお話しです。
高圧ガス移動監視者 って何?
聞き慣れない「高圧ガス移動監視者」というのは、どんな場面で必要となる資格なのだろうか。 その前に、そもそも高圧ガスに関する資格には多くの種類があって、「~移動監視者」とはそのうちの一つに過ぎない。他の資格も併せて下の表にまとめてみた。 |
高圧ガスの各種資格 | |
甲種科学・機械、乙種科学・機械、丙種科学(特別)、第一種販売 | |
第一・二・三種冷凍機械 | |
丙種科学(液石)、第二種販売、保安係員(LPガス) | |
保安企画推進員、保安主任者、保安係員(一般ガス) | |
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高圧ガス移動監視者 |
特定高圧ガス取扱主任者 | |
液化石油ガス整備士、保安業務員、調査員、業務主任者の代理者 | |
充てん作業者、ポリエチレン管の施工、配管用フレキ管 | |
業務主任者、液化石油ガス設備士再、充てん作業者再 | |
CE受入側保安責任者、特殊材料ガス保安 CE保安 | |
冷凍空調工事保安責任者(フロン、基礎)(フロン、付加・保安確認) | |
冷凍空調工事保安管理者(アンモニア、基礎)(アンモニア、付加・保安確認) | |
冷凍特別装置検査員 |
で、その「~移動監視者」は、分かりやすく言うと各家庭に配達をしてくれるプロパンガスのボンベを積んだ車輛を運転したり、一見しただけでは石油類を積んだタンクローリと見間違うことがある高圧ガス用トラックを運行するのに必要な資格となる。なお、同資格者が必要か必要ないかはガスの種類と数量によって違うので下記の表を参照して頂きたい。 |
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高圧ガスの種類と監視者が必要な数量 | |
可燃性ガス・酸素 | 圧縮ガス:容積 300㎥以上 |
液化ガス:質量 3000㎏以上 | |
毒性ガス | 圧縮ガス:容積 100㎥以上 |
液化ガス:質量 1000㎏以上 | |
液化石油ガス | 質量 3000㎏以上 |
特殊高圧ガス | 移動する数量に関係なく必要 |
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意外と高いハードル
受験する前からこういう事を書くと誤解を招いてしまうが、試験自体の難易度はそう高くないようだ。では、この資格を取得するのに高いハードルとは 1.試験(講習)が1年に2回しか開催されない。(四国地区の場合) 2.四国地区では高松でしか行われないので、松山からの移動や宿泊費が高額になる。 3.講習が平日の2日間である。つまり仕事を2日間も休まないといけない。 |
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たまーにTVのクイズ番組で問題に出される四国四県の名前とその配置。アナタは大丈夫ですか(笑) 愛媛県は愛知県ではないですし、佐賀県は四国ではありませんからね。この際に正しい知識をドーゾ。 四国って何処も隣り合っているから行きやすいように思われるが、交通網の未発達からその移動は結構過酷。 |
もう少し上記の補足説明をさせてもらうと 1.の年2回の開催は明らかに少なすぎだろう。都会では年4回行われているようだ。田舎では高圧ガスをあまり扱わないとでも思っているのか?四国地区では、一度機会を逃してしまうと次回まで半年も待たないといけないということだ。私は今回、実に一年越しのチャレンジとなる。 2.の高松でしかやってないことが最大の不満点。往復の交通費も高額になるし、2日間とも朝9時開始なので当日移動は不可能となり、おのずと宿泊を伴うこととなる。それ系の会社に勤めていたら費用は会社負担で・・・という恵まれた環境なのだろうが、私のように個人が受講するケースでは金銭的な負担が重くのしかかってくる。なお、受講料等を含めた費用については巻末で一覧にまとめるので参考にして頂きたい。 3.は地味に気まずいことである。なかなか平日に2日間の休みは取りづらい。おまけにこの講習だけでなく、2~3週間後に実施される試験も同じ場所であるので、受験するためには更にもう1日休まないといけないのだ。 |
受講・受験しようと思ったら
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1.高圧ガス保安協会のHPを見てみよう。お住まいの地区に該当するページに行くか「資格試験・講習」に進むと、受講したい講習ごとに手続きが掲載されているので、それに従い申請する。 受講日だけでなく、申請の受け付け期間も確認しておこう。常時受け付けしているわけではないので要注意。 |
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2.ダウンロードした手順書の巻末に「講習申込書」と「テキスト注文書」があるので、それぞれ必要事項を記入して当該の支部宛てに郵送する。その際には証明用写真1枚と振込領収書のコピーを貼り付けることを忘れずに。ちなみに受講料(受験料含む)が13,200円、書籍代(テキスト等3冊)4,790円、計17,990円という、結構なお金が必要となる。 おまけに注文した書籍の送料は着払いなので、後日来た宅配業者に770円も払わされた。 |
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3.申込書を郵送してから4~5日ほどで書籍は送られてきた。先述したとおり、送料を払って受け取ったらさっそく事前勉強をしよう・・・と、その前に。 |
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4.講習に参加するため、ここ松山から移動する手段を決めるのと宿泊施設の確保をしておかないと! 移動手段は私のお気に入りでもある高速バスに決定。ビジネスホテルは会場からちょっと離れているが、レビューでまあまあの評価だった宿を予約した。2泊する必要があるのでリーズナブルな料金ということも重要だ。 |
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5.最後は、非常に申し訳ない態度で休みをもらう。コレ、一番大事(笑) |
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受け付けは7月8日から22日までとなっているが、期間半ばで定員に達するので早めに 郵送したほうがいい。講習はお盆明けの17日と18日の2日間、試験は9月6日だ。 |
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届いた書籍達。左から「過去問題集」、「講習テキスト」、「保安法令書」となっている。今どき珍しく、カラーはどれも一切使ってない。まあ昭和世代にとってはそれは大きな問題ではないが、何より文字が小さいのと印字が薄いのが、老眼の私に対する嫌がせのようにも思える。 さすがに見づらくて仕方ないので、いつものAmazonで老眼鏡を購入してみた。3,500円也。安いだけあって期待したほど見えないというオチ付き。これならルーペのほうが良かったかも。あ~どんどん余計なお金が掛かってくる。 |
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見えてきた試験対策
試験はたったの20問しかない。その60%、問題数で言うと12問以上正解すれば合格となっている。 そう書くと随分と簡単な試験のように感じるが、実際に過去問題集をやってみると所々に落とし穴(いやらしい引っ掛け問題ではないが・・・)があって、ナメていたら勘違いから不合格になることが予想される。そこで下記に試験対策のワンポイントを抜粋してみた。 |
高圧ガスによる災害を防止するため高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動、その他の取扱い、及び消費並びに容器の製造及び取扱いを規制するとともに、民間事業者及び高圧ガス保安協会による高圧ガスの保安に関する自主的な活動を促進し、もって公共の安全を確保することを目的とする。 |
常用の温度においてゲージ圧力が1メガパスカル以上となる圧縮ガスであって、現にその圧力が1メガパスカル以上であるもの、又は温度35度において圧力が1メガパスカル以上となる圧縮ガス(圧縮アセチレンガスを除く) 常用の温度において圧力が0.2メガパスカル以上であるもの、又は温度15度において圧力が0.2メガパスカル以上となる圧縮アセチレンガス。 常用の温度において圧力が0.2メガパスカル以上となる液化ガスであって、現にその圧力が0.2メガパスカル以上であるもの、又は圧力が0.2メガパスカルとなる場合の温度が35度以下である液化ガス。 前号に掲げるものを除くほか、温度35度において圧力が0パスカルを超える液化ガスのうち、液化シアン化水素、液化プロムメチル、又はその他の液化ガスであって政令で定めるもの(液化酸化エチレン)。 |
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ガスを送り出し、または受け入れるために用いられるバルブ(以下 容器元弁)をその後面に設けた容器(後部取り出し式容器)にあっては、容器元弁及び緊急遮断装置に係わるバルブと、車輛の後ろバンパーの後面との水平距離が40センチメートル以上であること。 後部取り出し式容器以外の容器にあっては、容器の後面と、車輛の後ろバンパーの後面との水平距離が30センチメートル以上。 容器元弁、緊急遮断装置に係わるバルブ、その他の主要な付属品が突出した容器にあっては、これらの付属品を車輛の右側面以外に設けた堅固な操作盤の中に収納すること。この場合において操作盤と車輛の後ろバンパーの後面との水平距離が20センチメートル以上であること。 |
・絶対圧力 = ゲージ圧力 + 大気圧 (0.1013MPa) ・絶対温度 = 273.15 + セルシウス温度 |
アボガドロの法則 すべての気体は標準状態でおよそ22.4Lの体積を占める。 |
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【 例題 】 ある気体が内容積20Lの容器に温度-3℃、圧力5.0 MPa(ゲージ圧力)で充填されている。気体の温度が37℃になったとき、この気体の圧力はおよそいくらになるか。ただし、この気体はボイルーシャルルの法則に従うものとし、容器の内容積変わらないものとする。(令和元年度第3回試験より) 解答欄:(1) 3.1 MPa (2) 4.0 MPa (3) 5.8 MPa (4) 8.1 MPa (5) 12 MPa |
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ポイント1:ゲージ圧力を絶対圧力に計算する。 ポイント2:2つの温度を絶対温度に計算する。 ポイント3:高くなった絶対温度を元の絶対温度で割り、それに絶対圧力を掛ける。 ポイント4:最後にゲージ圧力に計算し直す。 例え方程式を忘れたとしても、文中に出てくる数字を拾い出して計算すれば大丈夫。上記のポイントどおりに書くと 1:5.0 MPaに0.10 MPaを足して絶対圧力にしておく。【5.1 MPa】 2:-3℃に273を足して絶対温度にしておく。【270 K】 3:同じく37 ℃に273を足して絶対温度にしておく。【310 K】 4:310÷270=1.148 1.148×5.1=5.86 MPa 5:5.86 MPaから0.10 MPaを引くと 5.76 MPa【約5.8 MPa】となり(3)が正解となる。 |
方程式も計算の仕方も分からない時には最後の手段として 裏技1:元の圧力から低くなる事はない。なので解答欄の(1)と(2)はない。 裏技2:圧力が倍やそれ以上になる正解はない。なので解答欄の(5)はない。 残りは(3)と(4)の二択となった。 裏技3:こういう問題の場合、意外と元の圧力から上昇しないことが多い。なので(3)となることを祈る。 |
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注:試験対策のために分かりやすく着色したものです。実際のボンベとは文字表記などが一部異なります。 |
圧縮ガスの容器に刻印されている「FP」は【最高充てん圧力】、「TP」は【耐圧試験における圧力】、「V」は【内容積】(単位はリットル)を表す記号。 |
充てん容器 = 充てん時から2分の1以上減少していないもの 残ガス容器 = 充てんしている容器で充てん容器以外のもの |
混載禁止(まぜるな危険!) | ||
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例外として・・・ |
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内容量120リッター未満の ・液化石油ガス ・圧縮天然ガス ・不活性ガス と、第四類の危険物 |
内容量120リッター未満の ・アセチレン ・酸素 と、第四類の中の ・第三石油類 ・第四類石油類 |
物質 | 分子量 |
アンモニア | 17 |
アセチレン | 26 |
空気 | 29 |
プロパン | 44 |
ブタン | 58 |
空気の分子量29より 分子量が多いとガスが下に溜まる。 分子量が少ないと大気中に拡散する。 |
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![]() 1の運転者による連続運転時間が4時間を越える場合 又は 1の運転手による運転時間が1日当たり9時間を越える場合。 |
講習に参加してきた
上段で書いているように、過去問題集から試験の傾向と対策が見えてきたと感じた私にとって、今さら講習は必要ないと思われるのだが、この2日間の講習に参加しないと9月の試験が受けられないので仕方ない。 ここはひとつ、コロナ禍でずっと外出もままならなかった代わりのプチ旅行だと、自分に言い聞かせて灼熱のお盆休み最終日に高松に出掛けた。 |
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高松といえば、何はなくても「讃岐うどん」だろう。ビジネスホテルにチェックインして、荷物を置いたらすぐにお目当ての店へ突撃(笑) だが、閉まってる! このコロナ禍で営業時間が短くなっているのか、お盆休みの最終日のためお休みなのか、定かではないが開いてないことは間違いない。このまま他に開いている店が見つかるまで、根気よく彷徨い続けるほどの気力や体力はないので、目に入ったチェーン店のうどん屋でこの日の夕食を済ませた。 まあ、あと2日もあるのだから、明日以降にお楽しみは取っておこう。 (結局、滞在中懐かしの讃岐うどんを口にすることが出来ないことを、この時知る由もない・・・) |
讃岐うどんの話しはともかく、本来の目的である講習を受けた感想としては、予想していたとおり2日間も座学を行う必要があるのかな?というのが素直な感想だ。講義をして頂いた講師の方々には申し訳ないが、もうちょっとぎゅっと詰めれば1日で終わる量ではないのだろうか。間延び感があったことは否めない。実際、寝ている人も多かったし。 ただ、時々試験に出るであろう箇所を親切に教えてくれるので、この時ばかりはちゃんと起きてチェックしておいたほうがいい。 それにしても暑い2日間だった。 |
試験を受けてきた
前段の講習から試験までざっと3週間弱。 この間の仕上がり具合で合否が決まるといっても過言ではないぐらい大事な期間だ。講習で教えてもらったポイントを疎かにすることなくマスターすれば、合格したのも同然だろう。 ただ、恐ろしいほど勉強が進まない。 講習前に自分で立てた対策と、それほど違ってなかったせいもあり、変な余裕が(油断とも慢心ともいう)出来てしまっている。いやいや、そんな余裕をこいていたら足をすくわれるんだぞオレ(笑) |
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分かっちゃいるけど、進まない。 進まなくても時間は確実に過ぎていき、あっという間に試験日直前となった。 当初の予定では、朝一番の高速バスに乗れば間に合うだろうと甘く考えていたのだが、それでも試験開始時間に間に合わないことが判明した。(いや、気が付くのが遅いだろ!) 試験開始:10時~ (10分前には着席のこと。なので遅くても9時半には着きたい) 試験終了:11時30分 (開始30分経過したら退出できる) なので、贅沢にも今回も前泊で乗り込むこととなった。 |
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この猛暑の影響で海水温度が異様に上がり、そのせいでエネルギーが増大した台風10号。ニュースでは盛んに「過去に例がないほどの強力な勢力」だと言っている。 うわーやめてくれ!ここまで来て試験中止なんて、シャレにならんやん。 結果的には、スピードが若干遅くなり、また進路も四国を直撃しなかったので、無事に開催された。ただ、帰りのバスで愛媛県に入った頃には土砂降りになったけどね。 |
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宿泊施設から見た試験当日朝の高松市街。もうそこまで来ている台風10号の影響で この日は雨の予報だったが、ご覧のように不思議なほど快晴だった。さすが瀬戸内海気候。 |
肝心の試験はどうだったかというと・・・ 正直ちょっとナメていたこともあって、全問正解なんて自信はない。さすがに開始後30分で退出しようとは思ってなかったけど、あんなに時間を使う(残り10分になってやっと諦めて出たほど)とは思わなかった。 まあそれでも合格ラインである60%以上は間違いなく正解している自信はあった。 ちなみに、試験の翌日には高圧ガス保安協会のHP上で正解答が掲載されるので、自分の答えをちゃんと覚えておけば合否は翌日に判明することになる。 正式な合格発表は10月5日。同じサイト上にて掲載される。 合格者には数日後に資格証?が送られてくるとのこと。 |
結果発表
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試験からちょうど一ヶ月後。やっと合否の発表が実施された。ただひたすらドキドキしながら待つだけの日々・・・と言うのはウソで、先述したとおり自己採点が出来るので既に結果は分かっている。HP上で確認するだけの作業だ。別コーナーで紹介した危険物の乙4の試験と違って、点数とかは出ない。受験番号が載っていれば合格という証。 もちろん(笑)・・・ |
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数日後、郵送にて修了証が送られてきた。 コレはコレで嬉しいけど、果たしてこの資格が役に立つ日が来るのだろうか?今更ながら不安でもある。 |
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費用の内訳
費用内訳 | 代金 |
受講料・受験料 | 13,200円 |
書籍代(講習テキスト、保安法令、過去問題集) | 4,790円 |
振込手数料 | 440円 |
証明用写真代 | 800円 |
書籍着払い代 | 770円 |
高速バス代(往復) | 7,650円 |
宿泊代(2泊) | 14,600円 |
試験用高速バス代(往復) | 7,650円 |
試験用宿泊代(1泊) | 10,800円 |
合 計 | 60,700円 |
この文章は2020年7月~12月頃書いたものです。