猿の茶屋
初秋の箱根遊覧記を掲載、文中の写真と内容はまったく一致してないのでご了承下さい。
高知県津野町の峠にて 峠から見る高知の美しい山々
2005年夏、一番の思い出は生まれて初めて箱根に行ったこと。
残念ながらデジカメを持って行ってなかったので、その素晴らしい景観を紹介出来ないが、さすが天下に聞こえた名勝地。ここ四国の田舎とは規模や施設が全然違う。
箱根といえば峠、峠といえば自動車雑誌御用達で有名な「箱根ターンパイク」とやらを走ってみたかったが、今回は箱根遊覧のフリーパスを購入したので、まずは小田原から箱根登山鉄道へ。
このフリーパス、大人用で4,130円(小田原からの場合。出発地によって若干料金は違う。ちなみに新宿からだと5,500円)もするがほとんどの電車やバス、ケーブルカー、ロープウェイ、遊覧船といった乗り物は乗り放題で施設の優待割り引きもある。有効期限は3日間なので、じゅうぶん元は取れるだろう。
私は比較的短めの一泊二日だったが、それでも後で乗り物代を計算したら軽く7,000円強は利用していた。特にロープウェイや遊覧船は思った以上に運賃が高いので、これを利用するのであればフリーパスはオススメ。
先述の箱根登山鉄道はスイッチバック方式で険しい箱根の山を登っていく。
スイッチバック方式とは、日本では珍しい(ここだけか?)走行で、急勾配を短距離で登るために何度か電車の先頭と最後尾が入れ替わりながら登っていく方式。クルマで言うなら前進とバックを繰り返しながら山道を登るような感じ。
終点の強羅(ごうら)駅までに計3回、運転手と車掌が歩いて入れ替わり、その都度進行方向が逆になるという、鉄道マニアにはたまらない電車である。後で出てくるが、ケーブルカー共々カメラを持った少年(注:中年も含むが心はたぶん少年)が大勢ホームにいて写真を撮っていた。
同じカメラ小僧でも、モーターショーでクルマそっちのけでキャンギャルばかり狙ってる不純な輩とはまったく違う。
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天狗荘前から高知県津野町方面を望む | 天狗荘駐車場にて |
いくつかの駅を経由しながら、電車は終点の強羅駅へ到着。 ここでケーブルカーに乗り換える。このケーブルカー、たしかスイスで使っていた車輌とか・・・あまりアナウンスを真剣に聞いてなかったので、もし違っていたら勘弁して欲しい。 もしそうでなかっても車体はいかにもアルプスの山岳地にマッチした赤と白のカラーリングでカッコイイ。昔、ケンメリスカイラインでよく似たカラーリングがあったのを思い出す。 内燃機関を搭載してないため、車内がとても静かなことも好印象だ。ハイブリットカーでモーター走行時の静かさと同じぐらいと言えば言い過ぎか。車内はほぼ満員、せっかくなので車輌の前の方に立つ。なぜか日本語より国籍不明な***語がよく聞こえる。 歩くのもツライ勾配を登っていくので当然スピードはゆっくり。でも、なぜかそれが不思議と気にならない。速いばかりがエライのではないのだ。 ケーブルカーは文字通りケーブルで引っ張られるため、基本的にカーブはない。後ろを見ると出発した強羅駅が、上を見ると山の上に終点の早雲山(そううんざん)駅が見える。それにしても本当にスゴイ傾斜だ。先ほど、歩くのもツライ勾配と書いたが、実際どれぐらい大変だったのかは後で紹介しよう。 |
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変わりやすい山の天気、このあとにわか雨に | 天狗荘前には大勢のライダーが |
早雲山駅からはいよいよロープウェイに乗る。 17〜18人乗りぐらいの比較的大きく新しいロープウェイだが、全面ガラス張りで尚かつ、エアコンは付いてないので炎天下に乗る車内はしゃく熱地獄。天井付近に換気用の小窓はあるものの、安全のため普通の窓は開かない。高所より高温で参ってしまいそうだった。小さい子供やお年寄りは真夏の時期を避けることをオススメする。所要時間8分と書いていたが、感覚的にはもっと長かったような気がした。 新しい車体が運行しているのは大涌谷(おおわくだに)駅まで。ここで古い型式のロープウェイに乗り換える必要がある。こちらはひとまわり小さいサイズで10人乗りぐらい。高度がさらに高くなったせいか、風が抜けるようになったせいなのか、こっちの旧型車輌の方が涼しかった。 源泉が吹き出している上を過ぎ、尾根を越え、周辺の美しい山々を堪能しながらロープウェイは芦ノ湖へ降りていく。 約18分ほどで芦ノ湖畔の桃源台(とうげんだい)駅に到着。だが、時間的にもうそう遠くには行けない。今日の宿泊地は、さっき乗ったケーブルカーの強羅駅近くなので、また戻る必要があるのだ。桃源台駅内を軽く見て回ってまたロープウェイで引き返す。 ここまでもいろんな交通機関に乗ったが、フリーパスなのでいちいちキップを買わなくていいのが助かる。ちなみにこのロープウェイだけでも、今私が乗ったように往復すると2,340円もする。そう言う意味でも、ありがたやフリーパス様(^o^) 団体さんの間になって順番待ちをしていたが、その中の男性が気を利かせて集団の先頭の方に行かせてくれた。一人旅をしているのは味気ないもので、こういう好意は普段より数倍ありがたく感じる。別に急いではないが、お礼を言って合法的な?割り込みをさせてもらう。 日が傾いたので、帰りはしゃく熱地獄も少しは収まっているかと思ったが、やっぱり車内は暑かった・・・。 相変わらず???語を大きな声で話し合う団体さんがいる。どこの国の人か興味あったが、何語すら判別出来ない私に話し掛ける勇気はなかった。抑揚の少ない日本語は彼らのパワー溢れる言葉にかき消されていた。 |
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途中日陰を探していたらこんな良い所が | 風が吹き抜けて中は快適 |
今来た経路を戻って、ケーブルカーの途中駅「公園上」で下車。ここから徒歩で予約を入れている宿へ。 少しでも旅費を安く押さえるため、宿での夕食はなしでお願いしておいた。ガイドブックを見ると、近辺に食事を取れる所が多くあったためだ。豪華な宿の食事も魅力だが、一人旅でそんな豪華さはいらない。 チェックインを済ませ、荷物を置いたら(荷物と言っても手提げ鞄一つだが)何はともあれ宿の温泉へ!まだ夕方の早い時間なので誰も入っていなくて貸し切り状態。炎天下に移動していっぱいかいた汗を洗い流す。ちょっと熱めのお湯に浸かって出てくる言葉は「極楽、極楽」・・・露天に出て涼んでいると、周りの山から聞こえる蝉の鳴き声に包まれる。 家の近所の温泉施設では10分100円ほど取られる足マッサージ器がここでは無料だったので、図々しくも3回ほど利用させてもらった。これでむくんだ足もスッキリ。冷たいジュースを飲みながらこの「ブゥイ〜〜〜ン」と唸る機械に足を乗せていると、出てくる言葉はやっぱり「極楽、極楽」・・・。 そろそろ辺りが暗くなりはじめたので食事に出ることにしよう。 歩いて数分の所にお目当ての店はある。普段滅多に見ないガイドブックによれば、そば屋だが隠れたオススメメニューとして親子丼が掲載されていた。箱根くんだりまで来て親子丼もなかろうにと思ったが、写っている写真も美味しそうなのでこれを注文した。 結果、予想に反してと言えば失礼だが、これが非常に美味!特に徳島産地鶏という鶏肉は絶品だった。バカ高い旅館の料理を頼んでなくてよかった。900円前後だったと思うが、この味ならぜんぜん高いとは感じない。強羅公園下の店なのですぐ分かると思う。麺類大好きの私にとって、そばにも興味あったがこの親子丼はオススメする。 |
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道の駅に認定された「小田の郷せせらぎ」 | この日は豪雨だった高知道、南国SAにて |
店を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。 標高が高いため、気温がぐっと下がったのがよく分かる。日中はまだまだ真夏のようだが、こうやって夜になると秋の気配が漂ってくるようだ。このまま宿に戻るのは勿体ないぐらい気持ちいいので、腹ごなしを兼ねてしばらく周辺を探索することにしよう。 といっても、時間的に観光客相手の店や施設は大半が閉まっている。どこの宿でも宴会タイムなのだ。歩いている人は見当たらない。他に行く所も思い当たらないので、昼間、乗り換えしただけの強羅駅までブラブラと降りていく。 昼間の喧噪がウソのように静まり返った駅には、取り立てて見るものもなく、駅前の土産物店も同様だった。どこの観光地にも置いてある○○饅頭や△△せんべいは売れているのだろうか・・・余計な心配をしてしまう。 特に興味を引くものもないので、そろそろ宿に帰ることにしよう。 が、来る時には下りなのでそれほど感じなかったが、帰りは登りなので無茶苦茶キツイ!本当にスゴイ傾斜だ。日頃の鈍った体にはかなりこたえる。ケーブルカーが普及した訳が分かった。クルマでも2速以上にシフトアップしないのでは? ゼーゼー言いながら坂を上るが、さっき食べた親子丼の親が口から出そうになって(失礼!)途中一休みを。せっかく温泉で洗い流した体が、また汗でびっしょりになった。宿に帰ってまたすぐに温泉に入ったことは言うまでもない。 一人なのに部屋はツイン。勿体ないようだが、そもそも一人用部屋というのがないらしい。片方のベットの上に着替えや荷物を置いて、もう片方のベットで寝るという何とも贅沢な使い方をさせてもらった。いつもは枕や寝床が変わると寝付きが悪くなるのだが、この日は知らないうちに夢の中へ・・・(-_-) |
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新設のアクアパレット、向こうはマドンナ球場 | 工事の不備が発覚してケチが付いた県武道館 |
朝は早くから起きて今日のプランを立てる。限られた時間の中で、出来るだけ多くの所を回りたかったのでバスや遊覧船の時間を綿密に計算する。が、いつもは絶対こんな面倒なことはしない。基本的に行き当たりばったりなのだ。 夕食はなかったが、朝食は宿のレストランで取るようになっている。このときに初めて分かったが、宿泊客のほぼ9割が女性だった。朝からオ○サ○パワー炸裂で、バイキング形式のテーブルの周りはさながら井戸端会議場と化していた。頼むから料理の前で大きな声でしゃべらないでくれ!あーんど、取ったらさっさとどけ! どうして自分の行動をいちいち口に出す?どうして同じことを2回言う? この場にいるすべての女性がそうではないが、そんな程度のモラルしか持ち合わせてないのなら今どきの若い子の行儀をとやかく言う資格はないぞ。山盛りにした皿を片手に昨夜のカラオケの話しに熱中している姿は、コンビニの駐車場で弁当を地べたに置いて食べている若者のレベルとさほど変わらないと思う。 「人の振り見て我が振り直せ」心の中でボソっとつぶやきながら、さっさとその場を後にする。 散らかしていた荷物をまとめて、チェックアウト。まずは朝一番のバスで箱根湿生花園のほうへ行こう。と、思って余裕を持って出たのだが、何とも間抜けなことに停留所を間違えてバスに乗れず。あれだけ計画したのに・・・あの苦労はなんだったのか。朝のすがすがしい空気とは反対に、私の上だけどんよりとした雲がかかっている(-_-;) まあ仕方ないか、気を取り直してどうするか考える。次のバスは30分後。ぼーっと待っているのも時間の無駄だし、時間が遅くなればまた観光客が増えて混雑する。箱根湿生花園方面行きは諦めて、昨日乗ったケーブルカーとロープウェイを使って、ここも昨日行った桃源台駅を目指す。 |
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芦ノ湖を遊覧している海賊船 |
ロープウェイもこれでもう3回目、さすがにもう感動はない。ただ、朝早いため昨日のような灼熱地獄になってないのが救いだ。 芦ノ湖畔の桃源台駅からは海賊船に乗ることにしよう。この遊覧船も一番の便なので、観光客が少なく混雑していないのが助かる。ただ、残念ながら快晴とはいえず、時折パラパラ雨粒が落ちる生憎の天気。晴れていたら写真のように富士山が見えるらしい。 デッキのほうが涼しくて景色もよく見えるのだが、雨には勝てず船室で観光アナウンスを聞く。私が乗った船はヴィクトリア号。ワンピースに出てくるような海賊船をイメージしていたが、海賊のオブジェがあるデッキはともかく、中に入ったら瀬戸内海を就航しているフェリーとそっくりなのが興ざめだった。外観だけでなく、中もそれらしくすればもっといいのに。 最初に想像していたより実際はもっと大きかった芦ノ湖を瀬戸内海フェリーは、いや海賊船ヴィクトリア号は大英帝国海軍の攻撃にも遭わず順調に進み、対岸の箱根町に着いた。ここからはバスに乗り換えて、出発点の小田原を目指す。 この小田原まで行くバスはこの時間か、もしくは午後の遅い時間しか運行していない。小田原で用事があるので、どうしてもこの便に乗る必要があったのだ。まあ最悪、登山鉄道に乗り換えたら昼過ぎには帰れるのだが、もちろん直行するほうが楽だろう。 箱根町発、そのとき乗っていたのは私一人だったが、停留所を経由するごとに乗客は多くなり、ついには途中で満員になった。この路線は箱根の主要道か?クルマの量も結構多い。 じつはこのページのタイトル「猿の茶屋」も途中の停留所の名前から拝借したもの。由来は・・・知らない。 登山鉄道に乗り換えるためか、乗客の大半が箱根湯本駅で降りた。 小田原まではもうすぐ。そこから東海道線に乗って一つ東京方面に移動したら、大型ショッピングセンターがある。どうしても公開したてのスターウォーズ「シスの復讐」を観たいがために早々と箱根を後にしたのだ。その映画の話しはまた別のページで。 初めての箱根もじゅうぶん満喫出来たし、映画も観られてよかったよかった。でも、今度(今度があるかどうかは分からないが)来るときにはデジカメを忘れず、クルマで来ようと固く誓った私だった。 |
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この文章は2005年9〜10月頃書いたものです。