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ダウンサイジングターボを搭載したトヨタのオーリス 120T 。
思いのほか走行距離が伸びたので先にインプレッションを。


雨の面河渓、開店前の渓泉亭にて。
石鎚スカイラインが冬期閉鎖中で走れなかった代わりに、奥にある面河渓まで入っていった。
写真は渓泉亭(けいせんてい)前にて。この日は平日の、それも早朝だったので店は開いてないし
他に観光客の姿はなかった。それもそのはず、3月末だというのに付近の山は雪で真っ白だった。
さすがにこの辺りになると、平地とは気温が違う。

ターボ付き、よね?

最後のほうは消去法に近くなってしまった感じがするが、結論から言うと件のオーリス120Tに決まった。
決まった?いやいや、試乗をするのを忘れているではないか(笑)

朝一番に家内を伴って販売店に出掛けた。周辺の道路が混雑する前に走りたかったから。
簡単な説明を受けて、いざ出発。
出発・・・しゅっぱ・・・サイドブレーキを解除し忘れているのか?まさかそんなことはない。第一印象はそんな勘違いをするほどの「遅っ!」だ。

まあ、決めたとはいえまだ店の売り物なのだから、遠慮がちのアクセル操作になるのはある程度仕方ない。それでも走り始めて百メーターほどの印象は正直「このクルマにだけターボ付け忘れたのか?」というものだった。
それほど出足は”もっさり”している。

ダウンサイジングターボというカッコイイネーミングから想像するような、シャカシャカ感はない。これは後になって距離を重ねるほどに分かってきたことだが、どうもドライブバイワイヤー(電子制御スロットル)と、私が嫌いなCVTのせいだろう。

後述するが、ステアリング操作同様、トヨタというメーカーはドライバーを一切信用していないようだ。
アクセルレスポンスにしても、最初の踏みしろでは敢えて燃料を絞っているようなセッティングにしてある。そのほうが車が勢い良く飛び出さないし、何しろ燃費にも有利だから。
だからこの車を元気よく走らせるには、アクセルを意識してガバっと踏み込むか、エンジンスタート後に毎回「スポーツモード」にする必要があるようだ。

そんなあまりよろしくない第一印象のエンジンと違って、足回りや車内の静粛性には期待以上のものがあった。
5千キロ以上走行しているので、フリクションもかなり減少してきているのだろう。足腰がしっかりしているので、路面の凹凸もうまく”いなして”いる。あ〜、これいい、いいわ。これにしよう。

ちなみに試乗中、後部座席に座った家内の感想は「とても狭い!」らしい。
リクライニングやスライドをしない後席に加えて、絞ってあるルーフ形状のせいでかなりの閉塞感があったようだ。我が家では荷物置き場にしか使わないが、ここに常時人を乗せる予定の方は居住性を十分に検証した方がよさそうだ。

参考までに車輛サイズが全長4,330ミリ全幅1,760ミリ全高1,480ミリと、このクラスでは標準サイズ。

面河に向かう途中にある店 面河渓にて
以前はお婆ちゃんが店番をしていた記憶があるが、いつの間にやら廃墟となって自販機と看板だけになってしまった、とある店。
「電話」という看板が今となっては珍しい。こういう雰囲気の店には必ず「ボンカレー」や「蚊取り線香」の看板が定番だ。
ルーフが黒いのは今流行のツートーン塗装によるものではない。オプションのパノラマルーフが装着されているため。

120T

インプレッション

納車後あちこちに走りに行ったせいで、思いのほか走行距離が伸びた。クルマの紹介より先に、現時点での感想を織り交ぜた簡単なインプレッションをしておきたい。

【エンジン】

欧州でのハイブリッド販売不振を挽回すべく、ライバル達同様の小排気量エンジンを開発した結果の1,2リッターダウンサイジングターボ「8NR-FTS」、このクルマを語る上での最大のトピックスだ。

メインマーケットは欧州で、ライバルは言わずと知れた世界の「フォルクスワーゲンゴルフ」だ。もっとも、ゴルフオーナーからすると、オーリスなんてハナっから相手にしてないだろうが・・・私はゴルフに乗ったことがないので比較は出来ない。

出足のもっさり感は先述したとおりだ。カタログ上は1,500回転という低いレンジから最大トルクを発生していることになっているものの、実感として過給器の恩恵を受けられるのはもう少し速度が乗った頃になる。だから、逆に言うと中高速域からの加速は一転して鋭いものがある。とても1,2リッターの小排気量とは思えないほどだ。

それより特筆すべきは何より静かなこと。ノイジーなエンジンが多いトヨタ車の中にあって、4気筒エンジン群ではトップクラスの静粛性だと思う。

【ミッション】

良く出来たエンジンも、駄目なミッションのせいで台無しになる。以前からするとCVTの悪癖は小さくなったとはいえ、それでも随所に興醒めな面を覗かせることがある。車速とリンクしないエンジン回転数や減速時のギクシャク感などがそうだ。気にならない人はそれでいい。だが、公平に判断してこの点はDSGのゴルフやポロに完敗だろう。
ちなみに、現オーリスでCVT以外のミッションを選択しようとすると1,8リッター版に6MTの設定がある「RS」というグレードに限られる。

【ハンドリング】

試乗した時から極低速時のステアリングの座りが悪いのは気になった。言い換えると、妙に軽すぎるのだ。ここまでアシストが必要なのか。指一本で軽く回せるほどに軽い。そのくせ、中高速域になると俄然重くなる。登坂車線の右側車線で(つまり、そこそこの速度で)コーナーに差し掛かった時に、まるでパワステが壊れたのかと思えるほどハンドルが重くなったのには閉口した。

その反面、良い効果につながっていると思われることもある。中高速域での直進安定性に優れている点だ。横風や路面のうねりといった外乱からの影響が非常に少ない。だから結果的に高速道路とかで長時間運転しても疲れが少なくて済む。

ワインディングで積極的にコーナーを攻めたくなるような感触はないが、これはハンドリングだけのせいだけではない。寝過ぎたうえに根元が太いAピラーのせいで先のコーナーの死角が大きいのだ。まあ、ハンドリングに関しては超絶ハンドリングマシンだったレガシィBP5の足元にも及ばない。

【乗り心地】

これは優秀な部分だ。欧州で使われる高い速度域でも破綻しないような強固な足回りに加え、剛性の高いボディの相乗効果によって数ランク上のクルマに思えるほど。国内専用のトヨタ車からすると、多少堅いかもしれないが私には丁度良い。
乗り心地が良いということは、ドライバーの身体が必要以上に揺すられないので、そのぶん運転操作に集中できる。

【総評】

掛けるべき所にお金を掛けて、高い志を持って作れば質の高いクルマが出来るという良い例のようなクルマだ。厳しいことも書いたが、それは私のオーリスに対する愛情の裏返しと思って頂こう。

いくら後ろ姿がジュリエッタに似ているからといっても、このクルマをホットハッチ的に使おうとして購入すると後悔するかも知れない。コンパクトな車体を生かして、街中をビュンビュン駆け抜ける・・・ようなことよりも、比較的高い速度域で淡々と距離を重ねる、そう、グランドツーリング的な使い方が合っているだろう。


120Tエンジン 120Tエンジン
120Tのエンジンルーム。一見するとぎっしり詰まっているように見えるが、エンジン本体はコンパクトな作りになっている。アイドリング時でもとても静かだ。
そんなにエンジン音には神経を使っているのに、タイヤハウスからの騒音は誰も指摘しなかったのか?トヨタ車らしい作りといえば”らしい”けども。
小石の跳ねる音も結構ビックリするが、雨天の日にタイヤが巻き上げる雨水の”バシャバシャ音”もかなりの音量アリ。普段静かなだけに余計気になる。


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