ミュンヘン | SAW 2 | ブリッド | シリアナ | |
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私は飛行機を見るのは好きだが、乗るのは苦手だ。 何が苦手かというと、あんな重いモノが空を飛ぶという根本的な不信感もさることながら、搭乗前の長い手続きが気に入らない。特に、身体検査は明らかに人を犯罪者扱いした行為としか思えない。さらに輪をかけて悪いことに、私はなぜか金属探知器でよく引っかかるのだ。 5年前の「9・11テロ」以降、靴●弾に神経質になっているのか、ゲートの無情な警告音の後は決まって靴を脱がされスリッパに履き替えさせられる。スーツ姿に花柄模様のスリッパ・・・そういう目に遭ったことがない幸運な人は一度、鏡の前で自分の姿を見ることをお勧めする。恐ろしく情けない姿に赤面するはずだ。 今回の作品はその「9・11テロ」よりずっと以前、もう34年も前のテロ行為「ミュンヘン・オリンピック村襲撃事件」に端を発したその後のイスラエル工作員達の活動をテーマに、あのスティーブン・スピルバーグ監督が復讐の愚かさを訴えた映画だ。 1972年、ミュンヘンのオリンピック村にパレスチナゲリラ”黒い九月”が潜入し、イスラエル選手団を人質にし同胞の釈放をイスラエル政府に要求した。が、政府はゲリラとの交渉を拒否。国外へ逃亡しようとするゲリラを西ドイツ警察が空港で襲撃するも、人質全員が殺されるという惨事に。激怒したイスラエルは「目には目を」の報復作戦を決断する。 秘密裏に5人で構成される暗殺チームを結成、ヨーロッパ各地に散らばった犯人達を一人ずつ処刑していく。だが、そのうち彼らの中で疑問や葛藤が芽生え、途中からKGBやCIAの影が見え隠れする頃から逆に仲間が一人また一人と殺されていく。 「本当にこれが正義なのか、正しいことなのか!」チームのリーダー、アヴァナーの苦悩をラストシーンのニューヨークの風景が如実に表しているように思えた。 先述したように、スピルバーグ監督が描きたかったのは、終わりのない復讐の連鎖がいかに愚かで虚しいことかということだろう。作品内では一概にどちらが悪者で何が真の原因なのかは明確にしていない。賛否両論あるだろうが、非常に質の高い社会派作品であることは間違いない。 余談だが作品内で食事のシーンが何度か出てくる。彼らの心理状態や置かれている状況を間接的に表現している場面だが、自然と「ディア・ハンター」や「ゴットファーザー」を連想したのは私だけだろうか。 2時間半を越える長編だが、間延びせずに最後まで観客を引き込む作りはさすが。質の高い作品に素直に敬意を表して、星3つとした。 |
シリーズモノは一番最初が一番面白い。 というのは、DVD1のページでも書いているとおりで、今でも変わってない。 最初から3部構成とかで制作されることになっている作品は別としても、大抵の場合1作目がヒットしたから次もこれで・・・という二匹目のドジョウ狙いが一般的だろう。興行収入をある程度見込める手段でそれ自体に異論はないが、これまた大抵の場合、展開に無理があり当然オリジナリティや新鮮さは感じられない。 「エイリアン」や「ダイ・ハード」などはまだいいほうで、「エルム街の悪夢」や「13日の金曜日」になると、もうサブタイトルを見ただけで悲しくなるほどだ。昔の名前で出ています〜的ナツメロ映画か・・・。 今回、その定説が当てはまるかどうかギャンブルしたのがこの「SAW 2」(ソウ 2)だ。2というぐらいだから当然「SAW 1」の続編になる。しかし、断っておくが今回は前作を観ていないので、最初の作品のほうが面白かったかどうか、すぐには判断できない。 オープニングから強烈な映像になる。この手の映画が苦手な人は始まって5分ほどで嫌悪感を覚えるだろう。だが、その効果も長続きしない。俗に言う「尻すぼみ」現象だ。 ストーリーは、ジクソウという連続猟奇殺人犯に捕らえられた8人の男女が、謎を解かない限り脱出不可能な館に閉じこめられ、次々と死んでいくというお話。全員、遅効性ガスを吸っており2時間以内に解毒剤の注射をしないと死んでしまう。その8人の中には、ジクソウを逮捕した刑事の息子も。 結論から言うと、1作目から観たほうがいいだろう。結末がどうやら1作目に関連した作りになっているらしく、ちょっと意味不明なシーンもあるためだ。前作を観ていない点を差し引いてもストーリーの展開や殺人の手口に目新しいものはなく、先述した尻すぼみ現象に陥る危険性は大いにある。 このシリーズは現在、3作目が制作中なのだが、あまりにも過激な描写でR指定を受けるかどうか議論されているらしい。勿論、そういう話題も映画作りには欠かせないものだが、話題だけが先走りするのも寂しいものがある。 今回のギャンブルは私の大負けという結果で、星1つとしよう。 |
最近のクルマ雑誌の記事内で久しぶりに「巨人、大鵬、玉子焼き」という言葉を見た。当時の子供の好きなモノの定番という意味で使われていた言葉だ。今では大鵬を知らないし、巨人戦の視聴率はガタ落ちで、食卓の玉子焼きを見ても誰も喜んだりしない。 そんな単純な定番がまだ通用した1968年に制作されたのがこの作品。私の中のヒーローの一人、スティーブ・マックィーン主演のシブイ刑事モノだ。残念ながら彼は1980年、肺ガンのため50才という若さでこの世を去ってしまった。 ロバート・ボーン扮する上院議員から依頼された証人保護、誰も知らないはずの隠れ家に二人組の殺し屋がやって来る。瀕死の重傷を負った証人は病院で死亡してしまうが、マックィーン演じるブリッド刑事は事件の真相を暴くため、証人が死んだことを隠し捜査を開始する。殺し屋の標的はブリッド刑事になり、坂のサンフランシスコでスタントなしの猛烈なカーチェイスが繰り広げられる。 坂を乗り越えるたびにフルボトムするサスペンション、カーブで大袈裟にロールする頑丈だが異様に重い車体、サイドウォールが大きく変形するためすぐ外れて転がるホイールキャップ、派手なタイヤスモークとV8エンジンのドロドロとしたエキゾーストノート、これぞアメリカ映画の定番カーチェイスだろう。 ペラペラボディにABSやトラクションコントロールのハイテクを装備した現代のクルマでは再現できない迫力だ。 ロバート・ボーンといってもピンとこない人も「0011/ナポレオン・ソロ」のソロ役と書けば顔が浮かぶだろう。マックィーンとはタイプがまったく違う役者だが、意外にも共演作が多く、この作品以外にも「タワーリング・インフェルノ」や「荒野の七人」などがある。 一方、マックィーンは他に「パピヨン」「栄光のル・マン」「大脱走」「シンシナティ・キッド」「ネバダ・スミス」「ハンター」「ゲッタウェイ」などなど数多くの名作がある。余談だが最後に来日したのは、たしか肖像権の裁判のためだったように記憶している。 彼は先のスタントなしのカーチェイスでも分かるように、クルマやバイクの腕はプロ並みだ。特に「大脱走」で見せた、ドイツ軍のバイクで鉄条網の柵を何度も飛び越えるシーンは圧巻! 不良だった故、社会に出てからも職を転々とした遅咲きの俳優だが、そんな過去があるがゆえ演技や仕草に独特のオーラを感じるのだろうか。 「荒野の七人」の撮影ではユル・ブリンナーが彼と一緒のショットを嫌がったという秘話も。マックィーンが出しゃばりすぎて、主演の彼が快く思っていなかったとも言われているが、実はそんなオーラをどこかで感じていたせいもあったのかも知れない。 本文が長くなったが評価は当然、星3つで決まりだ。 |
昔はロマンチックが止まらなかったが、今はガソリンの価格上昇が止まらない。 この地方は田舎だということもあって流通コストが掛かるせいか、もともと割高だったのに、それがこの夏の始めぐらいから値上げに拍車が掛かって一気にレギュラーで146円、ハイオクで156円ぐらいになってしまった。もうリッター200円台もまんざら架空の話しではなくなってきたかもしれない。 おまけに猛暑だったせいでエアコンはフル稼働のため燃費がガタ落ち。カーショップの店頭には省エネグッズが目白押しだが、費用対効果に疑問があるモノも。単純に、かつ確実に出来る対策は「クルマに乗らないこと」だろう。悲しい話しだ。 なんで原油卸価格が一定しないかという難しい問題は経済アナリストにまかせるとして、化石燃料が限られた量しか残っていないことや需要と供給のバランスが変化したことよりもなによりも、一番の問題はそれで儲けようとしている人間や会社、国家などが多すぎることだと思う。 そんな石油の利権に群がる人間や組織の陰謀を、3者の立場から同時進行の形で暴いた作品がこの「シリアナ」だ。 ストーリーは・・・とっても難しいし、複雑な話だ。強いて簡単に言うなら、藪の入り口に別々の3つの道があるのだが、その3本は結局どれも藪の中心部の石油という名の池に辿り着くようになっている、とでも表現しようか。 約2時間の作品だが、始まって1時間30分ぐらいはお互いの接点が石油以外に見えてこないので何のことやら分からないかも知れない。ちなみに3者とはCAI諜報員にジョージ・クルーニー、エネルギーコンサルタントにマット・デイモン、弁護士にジェフリー・ライトだが、彼らはお互いのことを知らない。 巨大企業の合併、イスラム過激派、国家間のパワーゲームなど、本当によく観ていないと話しが見えてこないだろう。過激なアクションシーンもなく正当な社会派作品だけに質は高いが、前半のストーリーがバラバラ過ぎて、正直飽きてくるのも事実。星は1つが妥当か。 ただ、こういうやつらのせいで高い石油を買わされている事実を、一人でも多くの人に分かってもらえればという期待も込めたのと、終盤のシーンでコンボイを組んで砂漠の道を走るクルマがメルセデスでもセルシオでもなく、レンジローバーとランクル100だったというリアリティさに加点し、甘い星2つとした。 |
このDVDのパッケージ写真からは今の貫禄たっぷりのロバート・デ・ニーロと似てないかも知れないが、彼の出世作ともなった1976年の作品だ。 ロバート・デ・ニーロといえば、アメリカ映画を代表する俳優の一人。ニューヨークをこよなく愛する、いわゆる生粋のニューヨーカーとしても有名。 出演作は数多く「グッド・フェローズ」「ザ・ダイバー」「バックドラフト」「ミッドナイト・ラン」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」などなど。 他にもいいモン食い過ぎだろうのエディ・マーフィーと共演した「ショウタイム」、今やT社最高級ミニバンの広告塔となってしまったジャン・レノとの「RONIN」などがある。 ベトナム戦争が与えた影響は我々日本人が想像するよりずっと大きく深刻だったようだ。この作品はこのあと現在まで続くベトナム戦争モノ映画の先駆者と言っていいかも知れない。 不眠症で悩むベトナム帰還兵のトラビスはタクシー運転手となる。治安が良くなった現代のニューヨークと違い、この頃のニューヨークはまさしく世界一危険な街。そんな薄汚れた大都会の夜に彼は何を見ていたのだろう。 次期大統領候補のボランティアをしている女性に一目惚れした彼は映画に誘うことに成功する。だが、入った映画館はポルノ映画、これで完全にフラれる。その後、13才の売春婦アイリス(当時12才だったジョディ・フォスター)と出会い、こんな世界から拭け出すように説得するが彼女は聞かない。 武器売人からいくつもの拳銃を仕入れ、大統領候補暗殺を試みるも失敗する。彼のいらだちはアイリスを働かせているヒモへ向けられ、武装した彼は売春宿へ乗り込む。 R指定を回避するためわざと色彩を絞ってモノトーン調にしたのが余計に迫力を増した銃撃戦。だが、映画本来のメッセージはラストシーンのセリフにあるように思えた。 本人が意図したことではなかったとはいえ、違法の銃器所持や殺人を犯したのにも関わらず、なぜかヒーローに祭り上げられたトラビスに星1つを減らし星2つとした。 |
最初に断っておくが、この作品には一部にエッチな描写がある。だから、家族と一緒に観ることはオススメしない。子供の前で気まずい雰囲気になる可能性があるためだ。 とはいえ、そういう楽しみを狙ったそのジャンルの映画ではない。バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督が1971年に監督した真面目な(?)作品だ。原題は「STRAW DOGS」 犯罪や暴力を否定してアメリカから、妻の故郷イギリスの片田舎に移住してきた数学博士。気弱な役がよく似合うダスティン・ホフマンが主人公。だが、彼のそういう性格につけ込んで、村の男達はあからさまに嫌がらせをする。 飼い猫を殺されても証拠がないからと問いただすことさえしない彼の態度に、妻はだんだんと嫌気がさしてくる。ある日、狩りに誘われて外出している間に妻が暴行されてしまうが、それでも彼は戦おうとしない。 教会の親睦会に集まった日、村にいる精神○弱者の男が女の子にイタズラをした疑いでリンチにかけられそうになるのを、ダスティン・ホフマンが自分の家に連れて帰り保護する。暴徒と化した村人達は男を渡せと襲撃を開始する。今まで暴力を否定し続けていた彼だが、極限の状態で「キレた」反撃を開始する。 前ページでも書いているが、サム・ペキンパー監督の銃撃シーンはとにかく強烈だ。ショットガンで大男が吹っ飛び、コルト45ガバメントのドングリみたいな大きな銃弾で上半身が大きくのけぞる。そんなシーンを効果的にスローモーションを使って表現している。だから今回も期待したのだが・・・。 舞台がイギリスの片田舎だからか、全体に暗い雰囲気がつきまとう。それと妻のキャラクターがいまいち理解できなかったし、その期待はずれの銃撃シーンetc。 最初からレイプシーンだけを目当てにこの作品を観るならお情けで星1つでも付けられたが、残念ながらサム・ペキンパー監督の作品として期待が大きかったぶん、がっかり度も大きく、泣く泣く星ゼロとした。 |
意外だがこのコーナー始まって以来、初めてのスパイモノだ。 とは言ってもジェームス・ボンドこと007(ゼロゼロセブンではなくダブルオーセブンと呼ぼう)シリーズみたいな派手さは一切ない。だけど、面白い!なぜなら原作がフレデリック・フォーサイスだから。 フレデリック・フォーサイスといえば、その筋で知らない人はいないほど世界的に有名なベストセラー作家だ。あまり本を読まなかった私でも、この人と大藪春彦氏の作品はよく読んだものだった。 この作品以外ではドゴール大統領暗殺を企てる正体不明の殺し屋を追った「ジャッカルの日」、アフリカの某政権を崩壊させるべく雇われた傭兵の活躍をリアルに描いた「戦争の犬たち」が有名。 時代はまだ「西ドイツ」とか「ベルリンの壁」という言葉が当たり前の世界だった1963年が舞台となる。 作品の冒頭でも描かれているが、63年といえば後に様々な陰謀説が出てくることでも有名なケネディ大統領暗殺事件の年だ。射殺される瞬間を捉えた解像度の悪い8ミリテープはもう何百回、何千回TVで放送されたことだろう。もちろん映画にもなった。ここから物語は始まっていく。 フリーのルポライターであるミラーは、ふとしたきっかけでガス自殺した老人が残した日記を目にする。そこには第2次世界大戦当時のユダヤ人虐殺に関わった収容所所長のことが書かれていた。彼らは戦争犯罪から逃れるため元ナチスSS隊員らで構成された秘密組織「オデッサ」によって新しい身分を与えられ今も生きているのだ。 同じドイツ人として、またジャーナリストとして単身、調査を始めるミラーだが調べていくうちに相手が巨大な組織であることが分かってくる。途中でイスラエルの組織(モサドと思われる)から協力を得て、オデッサに潜入することに成功するが彼の迂闊な行動で正体がバレてしまう。絶体絶命の危機を乗り越えられるのか。 ラストまでは正義感に燃えたジャーナリストがナチ戦犯を追いつめる話しと思わせておいて、最後に「あぁ、こういうことだったのか!」とドンデン返しをさせるところが憎い。当然、ここでネタばらしはしない。 ただ、原作を読んだ人なら本のほうが面白かったと感じるかも・・・特に古城でのラストシーンとかは。原作が良いのに越したことはないが、良すぎると映画での評価が厳しくなるのも仕方ないところ。よって、F・フォーサイスの作品としては星3つだが、映画の出来として惜しくも星2つとした。 |
このDVD、価格は500円なり。 前ページにも書いているが、私の場合DVDのほとんどはネット上で購入している。こんな田舎では店頭に置いてある数も知れているし、第一安いのが一番の魅力。自分で出掛けて行って買うより配達してもらう方が安いというのも、ある意味おかしな話しではある。 それ以外ではたまに書店とかで購入するのだが、この作品は珍しくPCショップで購入した。店じまいの特価セール品、よくあるワゴンに山積みされたもののひとつだからこんなに安かった。 だが、中身はそんなに安物ではなかった。 タイトル(原題はTheRobe)を見たら大体の想像は付くと思うが、ずばりキリストが最後にまとっていた赤い布、聖衣にまつわる物語となっている。キリスト教関係者以外には興味ない話しかも知れない。ちなみに私もキリスト教とは無縁だ。 キリスト教を恐れ、弾圧を繰り返していたローマ皇帝は人々を惑わした罪でキリストを処刑するのだが、その陣頭指揮を執っていたマーセラスという護衛官が主人公。 キリストに魅入られた奴隷のディミトリアスから聖衣を渡され、それに触れた時から精神的におかしくなっていく。救いを求め信者達と触れ合う間に、彼は自分本来の姿を取り戻せるのか・・・聖書どおり(?)ユダやペテロも登場する。 作品自体は良く出来ている。また、物語そのものよりも映画史上初のシネマスコープ作品だというのも有名だ。パッケージ裏面には「1953年度アカデミー賞4部門受賞」と書いてある。1953年・・・そんな昔にこれほどのスケールの映画が作られていたとは。 一歩間違えたら布教活動のプロモーションビデオと感じられるかも知れないが、キリスト最後の12時間とその後の復活を描いて、その関係筋から強烈なクレームが来た「パッション」(メル・ギブソン監督)よりも肩の力を抜いて観られるだろう。 その関係筋ではない私は純粋に作品の出来として星2つとした。 |